ご遺骨の六価クロム還元処理の必要性について

粉骨についてネットで色々検索していると「ご遺骨に六価クロムという有害な物質が含まれていることがある」という記事を目にすることがあります。

粉骨を実施している業者さんの中には、散骨する際の環境汚染を防ぐために「六価クロム還元処理」を実施しているところもあるのですが、当店でも「六価クロム還元処理」を実施するべきかどうかを考えるため、色々調べてみました。

クロムとは

クロムという物質は地球上の土中にクロム単体または三価クロムの形で広く存在しているそうです。単体のクロムは安定した極めて錆びにくい無害の金属で、皆さんもご存じのステンレスは鉄とクロムの合金なのだそうです。
また、家庭用品のめっき(金属の薄膜を被覆すること)にはほとんどクロムめっきが用いられているそうで、原料として現在も六価クロムや三価クロムが多用されているそうです。

なるほど…。
確かに、100均の台所金物やホームセンターの木ネジなんかも「材質:鉄(クロムめっき)」って書いて売られているのを良く見かけます。
また、当店主はキャンプやバーベキューが趣味で炭火に網を乗せて肉や海鮮などを焼いて食べますが、その際に使用する焼き網は、一部高価なものはステンレス製ですが、ほとんどの網は「材質:鉄(クロムめっき)」だったと思います。
クロムめっきの焼き網で人工的に炭火を熾し高温で肉や海鮮を焼いて喜んで食べてるんですけど、大丈夫なのだろうか…。

三価クロムは自然界には当たり前のように存在していて、サプリメントなどにも普通に添加されているのに対し、一方の六価クロムは自然界ではクロム鉱石として限定的に存在しているものの通常では存在しない物質のようですが、強い酸化作用を持つため皮膚や粘膜に付着した状態を放置すると皮膚炎や腫瘍、さらには癌などの原因になることもあるそうです。
六価クロムは三価クロムを人工的に高熱で焼くことによって生成されるそうですが、クロム自体は高沸点重金属の化合物で、融点・沸点ともに高いため、六価クロムそのものが常温で気化することはないとのこと。

ふむふむ…。
う〜ん、なんだか難しいですね。
ただ、思いのほか身近にある毒性の強い六価クロムですが、めっき加工の原料として日常生活を送る我々も多大な恩恵を受けているということは良く分かりました。

六価クロムがなぜご遺骨に含まれてしまうのか

で、本題に戻りますと、自然界には通常存在しないはずの六価クロムがなぜご遺骨に含まれてしまうのかというと…、
人が亡くなると火葬場で火葬することになりますが、火葬炉内に納めるためにご遺体を乗せる架台がステンレス製やスチールにめっきを施してあるものが多く使用され、火葬する際の高熱に晒されることでステンレスやめっきに含まれるクロム物質が六価クロムとして生成され、ご遺骨に付着してしまうことがあるということですが、全てのご遺骨に六価クロムが付着している訳ではないようです。

へ〜。そうなんですね。
確かに粉骨を実施している業者さんの中には有毒な六価クロムを特殊な薬剤により無害な三価クロムに還元させていると謳っているところもあります。
当店では粉骨のご依頼があればご遺骨を水で洗浄することもありますし、お客様が粉骨後のご遺骨をお墓の納骨室内、さらには山や海へと散骨することもあるかもしれませんが、六価クロムに関しては何の手立ても講じておりませんので、その場合にはもしかしたら知らず知らずのうちに環境汚染の一端を担ってしまっているのかもしれません…。

これまで六価クロムを意識したことがありますか?

しかし、火葬が終わってご遺骨を拾う際、防護ゴーグルやマスク、手袋などの着用は求められませんよね?極端かもしれませんが、もし環境や人体に影響が及ぶほどの六価クロムがご遺骨に付着しているのであれば、お骨上げの際にそれなりの防護手段を求められるのではないかと思うのですが…。

また、多くのお寺様には永代供養のため、または無縁になってしまったご遺骨を合祀するための合祀墓があります。そこへ納める際には一般的にご遺骨を骨壷から空けて合祀墓の納骨室内に散骨してしまうのですが、特に薬剤などを掛けたりしませんし、ましてや手袋やマスクなどもしません。
別に自慢しているわけでもなんでもありませんが、当店でも粉骨を実施する際には手袋もマスクも付けておりません。
なぜなら、当店では粉骨加工は単なる作業だけではなく故人様へのご供養のひとつだと考えているからです。

余談

余談ですが、何年か前に板橋区内のあるお寺様のご住職にこう言われたことがあります。「石屋さんは、納骨の時にお施主様からご遺骨をお預かりして納骨室に納めるでしょう?ということは、ご遺族に託されて、ご遺族以上に本当の最後の最後まで皆様の大切な故人様に触れることを許された職業なのだから、その自覚をもって仕事をしなさい。」と…。
特に怒られてその話をされたという訳ではなかったのですが、その時は改めて気が引き締まる思いだったことを思い出します。

現在、墓地や埋葬などに関しては昭和23年に制定された「墓地・埋葬等に関する法律」というものがあり、様々なことが細かく定められておりますが、粉骨に関しては特に何も定められていないのが現状です。粉骨加工を実施する業者に関しても今のところ特に何の許認可や資格も必要ありません。やろうと思えば誰でも出来てしまうのです。今後、粉骨の需要が増々高まってくれば新たに法律や許認可制度などが定められるのかもしれませんが、昭和23年当時にはご遺骨を粉末状にするということは想定外だったのでしょう。

もちろん当店でも行政からの指針などが示されれば、直ちに当然それを順守するつもりです。後ろ指を指されるようなことをコソコソやるつもりは全くありません。
しかし、ご遺骨に付着しているかもしれないといわれている六価クロムに関して、特に行政からの指針や指導などが示されるまでは、従来通りお寺様や石屋が当たり前のように行っている慣習通りに皆様の大切な故人と向き合っていきたいと考えております。

追記

でも考えてみると、もし本当にご遺骨に環境や人体に影響が出るほどの六価クロムが付着しているということになれば、当店のように粉骨加工を実施している業者がどうこうというより、そもそも火葬を実施している火葬場で何らかの対策が講じられ、火葬時にご遺骨に六価クロムが付着することが無いような方法や手段が取られるのでは?
いまのところはそのような動きは無いようですので、「六価クロム」に関しては過度に意識することなく、今までと変わらず素手&ノーマスクで故人様と向き合ってまいりたいというのが当店の「六価クロム」に関する考え方です。

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